【落語】動物園(どうぶつえん)
朝が弱く、力仕事が苦手で、口下手なため、仕事勤めが続かない男がいた。
ある日、ぴったりの仕事を世話してもらうことになった。
午前10時出勤でよく、何も持たないでよく、しゃべる必要もなく、昼食・昼寝付き1日1万円だという。
好条件に飛びついて紹介状を受け取った男が着いた現場は、なんと移動動物園。
移動動物園の園長は男に、虎の皮を渡した。
目玉展示の動物である虎が死んでしまったため、残った毛皮をかぶって虎になりすませ、という。
早速毛皮をかぶった男は虎の檻に入れられ、園長に虎の歩き方を教わった。
園長は、前足の方向と逆に頭を向けると虎らしく見えるといい、男の前でやってみせる。
開園時間になり、多くの観客が虎の檻にやって来た。
空腹だった男は、子供客の持っているパンほしさに思わず「パンくれ」
とつぶやいてしまう。それを聞いた子供にパンを投げ込んでもらうが、四つんばいの姿勢なのでうまく食べることができない。
仕方なく手でつかむが、とうとう子供に不審がられた。
男はうなり声をあげて子供を泣かせ、なんとかごまかした。
空腹が極まり、タバコも吸えず、難渋する男。
そんな中、動物園のアナウンスが「虎とライオンの猛獣ショー」の開催を告げた。
男は事前に説明を受けなかったので、慌てふためいた。
虎の檻の中にライオンが放たれて、男はパニックに陥った。
ライオンはうなり声を上げながら男の耳元に近づいて、
「心配するな、わしも1万円で雇われたんや。」
この噺は、『動物園の虎』『虎の見世物』『ライオン』『ライオンの見世物』ともいわれます。
from のも