【落語】死神(しにがみ)
何かにつけて金に縁がなく、子供に名前をつける費用すら事欠いている主人公がふと
「俺についてるのは貧乏神じゃなくて死神だ」
と言うと、何と本物の死神が現れてしまう。
仰天する男に死神は
「お前に死神の姿が見えるようになる呪いをかけてやる。もし、死神が病人の枕元に座っていたらそいつは駄目。反対に足元に座っていたら助かるから、呪文を唱えて追い払え」
と言い、医者になるようアドバイスを与えて消えた。
そして男は医者と名乗り、ある良家の跡取り娘の病を呪文で治したことで、医者として有名になり、男は富豪となったが「悪銭身に付かず」ですぐ貧乏に逆戻り。
おまけに病人を見れば今度は死神がいつも枕元に・・・。
あっという間に以前と変わらぬ状況になってしまう。
困っていると、さる大店からご隠居の治療を頼まれた。
行ってみると死神は枕元にいるが、三千両の現金に目がくらんだ男は死神が居眠りしている間に布団を半回転させ、死神が足元に来たところで呪文を唱えてたたき出してしまう。
大金をもらい、大喜びで家路を急ぐ男は途中で死神に捕まり、大量のロウソクが揺らめく洞窟へと案内された。
訊くとみんな人間の寿命だという。「じゃあ俺は?」と訊く男に、死神は今にも消えそうなロウソクを指差した。
死神いわく
「お前は金に目がくらみ、自分の寿命をご隠居に売り渡したんだ」。
ロウソクが消えればその人は死ぬと言われ、パニックになった男は死神に必死に助けを求めると、
「では、燃えさしがあるから、これを繋いでみな」
と、死神から渡されたロウソクを寿命に継ぎ足そうとするが、恐怖で手が震えてうまく継ぎ足せない。
「何でそんなに震えて居るんだ。震えると消えるよ。消えると死ぬよ。」
「そんな事言わないで~」
「あぁ〜もう消えそうだ・・・消えてしまう・・・あぁ・・・消えた。」 バタッ
この噺は、ヨーロッパの死神説話を三遊亭圓朝が日本に輸入し、翻案したものとされています。
具体的にはグリム童話に収載された『死神の名付け親』、またはリッチ兄弟の歌劇『クリスピーノと死神』だと考えられているようです。
この噺の落ちは、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、自分の寿命であるロウソクの火を自分で確認するというシュールな部分であったり、その他の落ちでは、やっとのことで火を燃えさしに移すことに成功し、一息ついたところ、自分の息で火を吹き消してしまう、というような落ちもあるようです。
from のも